1995年北海道俳句協会賞佳作
手鏡に厄年恐る春の夜
花衣脱ぐやほてりを吸ふ鏡
なで肩の女系家族や藤の花
春愁や三十路の女の長湯癖
恋人は複数たんぽぽ一面に
子が無くて海の眩しさサングラス
夏シャツやフリーサイズの恋ばかり
甘すぎる田舎の菓子や魂祭
栗飯のふんわりかかあ天下かな
帯解かれ秋の蛍となりにけり
湯の神は混浴が好き草もみじ
秋蝶や母の病を吾も得し
花林糖夫と分け合ふ雨月かな
冬紅葉妊娠せぬ日を男問ふ
白足袋や女の意地は見せぬもの
湯ざめして男恨みし髪を梳く
雪催ひ夫あらぬ夜は鶴を折る
淋しさに襟足剃りぬ寒燈下
足の裏見つめ勤労感謝の日
稼ぎきし化粧落とすや風邪心地