バイト先の会社から、年末調整の用紙を渡され、必要事項を記入して、判子を押しました。
印鑑なんて、こんな時ではないと、押すこともない。
印鑑を無くそうなる運動もあるようですが、私の印鑑は、40年近く前、高校卒業の時に、おこづかいをはたいて買った象牙の印鑑で、姓名判断をして蛸みたいに曲がりくねった「陽子」だけの印鑑です。結婚すれば姓が変わるから、名前にしなさい、と言われました。
今は、象牙は、動物保護の観点から使われないし、結婚しても旧姓で働くことや、夫婦別姓まで言われますが、昭和はそうではなかった。
わざわざ、1万円も出して印鑑を買ったのは、就職してできれば出世したい、いつかは、良い結婚をしたいと思ったからでした。
印鑑で、それができるわけはありませんが、当時は、「欠けた印鑑は運勢が悪くなる」と言われ、私も、縁起を担ぎました。1万くらいなら、何とかできた。
印鑑を入れる袋は、2016年の1月に、大阪の十日戎を見物した時、誰かが落とした縁起ものの巾着を拾って使った。
十日戎は、賑やかな行事で、縁起ものの小判やら巾着やらをつけた笹を買う人が、通りを歩いて、屋台もたくさん出ていた。
わたしたちは、何も買わなかったが、見ると、誰かが落とした黄色い巾着が、泥にまみれ、みんなそれを踏んで歩いてゆく。商売繁盛を願って作られた巾着が泥にまみれ、踏まれるのは痛々しく、思わず拾って、よく見ると、宝船が描かれた巾着は、なかに5円玉を仕込んである。
「せっかくの縁起ものだから、洗って使おう」
洗うとかなり、綺麗になった。
来年はコロナが収まることを祈ります。
# 十日戎