昔、小坂明子という人が「あなた」という歌で、
「そして私はレースを編むのよ」と歌いあげましたが、
昭和の時代、ちょっとした中流以上の家庭には、ピアノやテーブル、応接間のソファーに、白いレースのカバーがかかっていたものでした。
専業主婦の割合も高く、主婦の友などの雑誌には、レース編みの特集もありました。
「もしも私が家を建てたなら小さな家を建てたでしょう」と言っても、
こんにちのエンピツハウスではなく、大邸宅ではないが庭付きの家を指しているのは言うまでもありません。
「あなた」という歌は、小坂明子という人の歌で、天地真理さんの他にもたくさんの歌手がカバーしていますが、
この歌は、当時の女性たちの憧れの世界、
素敵なご主人、庭付きの家、可愛い坊やがいて、庭には花が咲き乱れ、奥様はレースを編み、そんな美しい世界への憧れを歌い、ヒットしました。
1970年代、水洗トイレやスイッチ一つで沸く清潔なお風呂のあるモダンな住宅はまだ少なく、テレビや電話機などはようやく、末端の庶民に行き渡るか、という時代でした。
レース編みは、そうした愛情豊かにしてモダンな生活の、象徴になったかも知れません。
アパート住まいでも、テレビや電話機、ドアノブなどに、レースカバーを編んで作る器用な女性もいました。
白いレース編みの手芸品やカバーなどは、私にとっては、懐かしい昭和や、細やかな生活を意味しております。
が、私は、不器用で、レース編みも裁縫も美術、図工もまったくダメ、
何を作っても失笑されるので、縁がない世界でした。
ですが、先日、友人のお母さまから、レース編みの作品をいただきました。
さっそく、電話機やラジカセのカバーにしました。暖かい昭和の世界です。