いつものカレーの店に行くと、9歳くらいの若者が、「この歌、知ってますか」と、「クリームソーダとシャンデリア」をYouTubeでかける。
「歌の存在は知ってますが、うまく、歌えません」
「最近、夜に駆けるばかり耳にするので、飽きちゃった。よあそびちゃんは、こればかりですね」
「はるじおん、とか、他にもあるけど、夜に駆けるのほうが、インパクトがあるのかも、しれません。
だけど、ひげだんの、I loveてんてん、のほうが、耳につきませんか」
「ひげだんって、何だっけ」
「イッレギュラー、です」
「ああ、それはありますね」
「それとか、香水とか」
「あたし、香水、好き。
夜中にいきなりさ、いつ会えるってライン」
店を手伝う男性が、
「最近の歌は、アップダウンが激しくて、歌えない」
「昔の歌なら数回聞けば覚えるけど、今の歌は、覚えにくいと思います」
すると、YouTubeで、昔の発禁ソングの「金太の大冒険」をかけて、
「昔はこういうのがあったんです」
金太という名前の人が、何かをすると、金玉がどうの、という掛詞になるナンセンスソングだった。
性器を連呼するので、発禁になったと思われるが、他愛ない、子供に受けるような歌で、目くじら立てるほどでもないと思った。
すると、若者、
「これ、知ってますか。しねばいいのに、しねばいいのに」
「いや、知らないです。何ですかそれ」
YouTubeで聴いてみると、視聴には年齢制限があり、
爽やかに「しねばいいのに、しねばいいのに」と連呼して、日常のうまく行かない出来事をうたい、しねばいいのに、とする歌だったが、これも、最近の歌ではなかった。
「この歌は発禁じゃないけど、年齢制限がありますね。退廃的だなあ」
若者、
「最近は何を聴いてますか」
「今覚えたいのは、魂の色は何色ですか、です。覚えたのは、ヴィランです」
「第六感、良いですよ」
「近いうちに覚えます。あと、ギターで弾けたらいいな、というのが、猫、です。猫になったんだよな君は」
「私もそれ、好きです」
すると、私と同年男性、
「若い人には明日がうざいほど来るけど、年をとったら、明日はあと何回来ることか」
「猫になったら20年しか生きられない。人間のままで、長生きしたい」
野良猫のように目を光らせた熟年女は、カレーを食べてから帰るのでした。
#クリームソーダとシャンデリア
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