高級家具で有名なIDC大塚家具が、経営不振になり、安価路線を模索するも上手く行かず、ヤマダ電機の子会社になると報じられました。
かつて、お台場にある大塚家具の有明本社の家具展示場を見学したことがあります。
2005年頃、ある女装家の写真撮影を頼まれ、お台場で写真撮影すると、お礼に食事をおごると言われました。
私は、「松屋や吉野家のようなチェーン店で良いです。行きなれていますから」相手はありありと哀れみの表情を浮かべ、「お金のことなら、心配しないで良いです。ちゃんとした店で、ちゃんとしたサービスを受けましょう」
自分一人なら入らないような、洋食のレストランで、ステーキとサラダなどを食べた。
一人分が3000円くらい、味は美味しく「ね、高くはないでしょ?心配しなくてもいいのよ。私にとっては安い店よ」
確かに、この値段なら、夫と行けなくはないが、しかし、気軽に行ける店ではなかった。
そして、そのあと、大塚家具の有明展示場を一緒に見ようと誘われた。
そこに入ると、今まで、見たこともない高級家具が並んでいた。田舎の家具店で見た、嫁入りの和洋箪笥や鏡台とは、比べ物にならない、
木の木目の美しい、一枚板の、豪華な邸宅やお城に置くような、凝ったデザインの家具ばかりだった。
最近は、それほど高級感がなく、ニトリと変わらない雰囲気ですが、当時はもっと豪華で、デザインも凝っていた。
女装家は「ああ、素敵なベッド、お姫様が寝るみたい。こんなテーブルも良いな。さ、もっと稼いで、こういう家具を並べた部屋に住むわ。あなたは、どの家具が良い?」といきなり質問されて、私は口ごもった。
私は、6畳と4畳半の二間の、家賃4万の公社住宅に住んでいて、大きくて立派な家具など、置くような余裕はまったくなかった。
天蓋つきのベッドや、マホガニーのテーブルなど、物理的に無理だった。
「ねえ。こういう美しい豪華な家具を欲しいと思わない?」
確かに、美しく素晴らしい家具だが、こんな家具を置ける広い部屋を借りようとしたら、家賃はいくらだろう。それを望むのは、夫にさらなる負担をかけるのではないか。
世の中には、望んではならないことや、見てはならない夢があるのではないか、しかし、それは言葉にならないでいると、
「本当は欲しいんでしょ?だったら、こういう家具に囲まれている自分を想像するのよ。
思いは実現するのよ。マーフィーの法則って知らない?」「マーフィー?誰ですか」「未来をイメージすると、描いた通りの未来になる、と提唱している人よ。あなた、もっと前向きにならなくては」
よく分からないが、とりあえず、凝ったデザインの立派な家具や、お姫様が寝るような天蓋つきのベッドで寝ている自分を思い描いてみたが、
「こんなでかいベッド、部屋に入らねえぞ」
と言っている夫の顔だけがはっきり見えた。
未来は想い描いた通りには、ある程度はなると思うが、突拍子もないことは実現しない、今はそう思う。
大塚家具については、食生活を質素にしても高級家具が欲しいマニアや、所得の高い富裕層は一定数存在するので、こういうマニアやリッチマン相手に高級路線のほうが、良かったかも知れません。
その後、もう少し広い住宅に移りましたが、それでも、箪笥や食器棚など置く余裕はなく、安価なパイプハンガーや、カラーボックスに服をかけていて、服もユニクロやパシオスばかり。
ケーヨーD2で買った炬燵には、猫がいびきかいて寝ている。でも、このほうが、落ち着きます。
最近、粗大ごみ置き場に、まだ使える素敵なラタンの小箪笥が置いてあり、こういうのが欲しかったので、引き取りました。