ずぶぬれの二人の札幌

札幌でフリーライブとグルメを楽しんでいます。

シネマ歌舞伎「三人吉三」、中村七之助の女形が美しい

 本日、JRタワーにて、シネマ歌舞伎三人吉三」を見てきました。あらすじが入り組んでいますが、夜鷹のおとせと一夜を共にした十三郎は勤務先の商店からの預り金100両を落としてしまい、身投げしようとするが、見回りで巡回していたおとせの父親伝吉が発見し、「100両なら娘が預かっている」と安心させるが、おとせは、そのお金を、振袖姿のお嬢様に奪われ、川に突き落とされる。

 その振袖姿のお嬢様は「お嬢吉三」という男性の盗賊、100両せしめて「こいつは春から縁起が良いわい」と笑う。

 その大川端の庚申塚あたりで、通りかかった和尚吉三、お坊吉三が三人で、兄弟の契を結ぶ。お坊吉三はもともとはある家の長男で、その家に預かっていたその名も庚申丸という刀を盗まれたことで、家は断絶、長男は盗賊になった。

 先ほどの100両は、その庚申丸という刀が巡り巡って売買されたお金だった。お坊吉三の家から刀を盗んだのは、実は、和尚吉三の父親で、和尚吉三ははおとせの兄でもあった。

 一方、おとせの恋人となった十三郎は、八百屋久兵衛の息子だが、寺に置き去りにした赤ちゃんを拾った養子であり、実の親は、おとせと和尚吉三の親の伝吉である。つまり、おとせと十三郎は、それと知らず近親相姦をしていた。

 お嬢吉三の実父は、八百屋久兵衛であり、5歳で拐かされて、盗賊になった。

 それぞれがそれぞれの因縁を背負って殺し合いになる、陰惨な内容だった。

 しかし、主役の和尚吉三の中村勘九郎の演技は素晴らしく、華やかだった。そして、お嬢吉三の中村七之助は切れ長の目が寂しげな、本当に綺麗だった。歌舞伎は、女性の役を男性が演じるが、お嬢吉三は、女性を演じる男性をさらに演じるもので、素の男に戻ると、声としぐさが男に戻るが身なりは振袖のまま。それが、声としぐさだけで、「振袖を着てお嬢様を演じる男性」に見える。

 お坊吉三とともに死のうとするお嬢吉三の七之助は、すごく、生々しいくらいに、綺麗だった。

 庚申塚は、北海道には少ないが札幌北区にあり、昔の人は庚申の日に祈りを捧げたとか。また、庚申塚には、「見ざる言わざる聞かざる」の三猿が祀られているそうです。