今日もシュルマに行き、テイクアウトでカレーライス、ナンを持ち帰りました。大根のカレーは美味しかった。
最近は、図書館に行くようになり、桜木紫乃という人が書いた「ホテルローヤル」を借りてきました。
これは、今年の秋に映画化される小説で、北海道釧路のラブホテル「ホテルローヤル」をめぐって、過去をさかのぼるようにして、人々の生きざまを描くもので、北海道出身者の私には「分かる分かる」という部分もありました。
廃墟になったホテルに入り、ヌード写真を撮るカップルの男は、アイスホッケーで高校時代、全国大会優勝という輝かしい過去があるが、怪我で挫折、コーチにもならず、今は、スーパーの運送をやるが、やはり、過去の栄光から逃れられない。
釧路の寺の住職の妻は、養護施設出身、不器量で身寄りもない看護助手だったが、二代目住職と結婚、
しかし、住職は人格者だが、ぼんやりしたところがあり、性的に不能だった。
不景気な世相、檀家も減るなかで、住職夫人は、檀家代表の老人たちと肌を重ね、その行為でお布施を得ていた。
といっても、老人たちとの行為は、ほぼ、介護マッサージに近い、「奉仕」とされ、それゆえ浄財とされて、そのお布施は、ご本尊の大仏さまの足元に置くと、住職はそれを納めたが、
檀家代表が若い息子に代替わりすると、その行為は快感を伴い、奉仕ではなくなった。
不能の住職は、そのお布施だけは受け取らない。住職は、妻が快感を得たことに気づくが、何も言わず、夫婦は今までどおり過ごす。
親を頼らず、自力で生きる北海道の人間の、信仰心の薄さ、合理性が描かれます。
住職は、なぜ、檀家を失ったのか。
不景気な世相や、先祖なんか供養しなくても、別にどうにもなりゃしない、というのもあるが、
ぼんやりしたところがある住職は、予約の法事をうっかり忘れて、キャンセルされたりした。
その浮いたお布施代で、法事をしようとした夫婦は、ホテルローヤルに入る。
亡くなった人への念仏に5000円払うより、生きている生身の人間の弾ける性欲を満たすホテル代にするのだ、それが、生きていることだった。
その他、ホテルローヤルの清掃員の、60歳のミコちゃんの話が切ない。ミコちゃんは、中学を出てから、ずっと働きづめに働き、結婚し、子供が3人でき、その子供も音信不通で、夫は働かない。
次男だけが、たまに連絡があり、お金を送ってきたが、札幌で、殺人犯として逮捕される映像が流れる。あれは、本当に息子なのか。勤務先の人も、いろいろ訊いてくる。
そんななか、ミコちゃんは、亡くなったお母さんの言葉、
「いいかミコ、なにがあっても働け、一生懸命に体動かしている人間には誰もなにも言わねえもんだ。聞きたくねえことには耳ふさげ。働いていれば、よく眠れるし、朝になりゃみんな忘れてる」
を思いだし、とにかく働く。
この言葉は、本当に胸に突き刺さる、辛いことがあっても、そうやって生きてきたのだろう。
過酷な大地、北海道で、一生懸命で、ちょっとおバカで、不器用な、下層の人たちを丁寧に描き、
私も、すごく共感しました。人間って可愛いよなあ、
性欲をぶつけあい、満たしあい、
「お金がなくても幸せと錯覚できたあの頃の自分が、ひどく哀れ」と、夫とホテルに入った妻は思うが、いや、それは、錯覚じゃなくて、本当の幸せだったのだと、彼女を励ましたい。
そして、お金があったら、またホテルに夫と行きたいから、性交じゃなくて、セイコーマートでバイトしたい彼女を抱きしめたい。
#桜木紫乃