前から気になっていた北区の梶原銀座を散策しました。
都電の梶原駅の近くですが、北区王子駅から歩いても行ける近さです。
まずは、商店街入口近くの「明美」という和菓子屋さんに入った。
ここは、「都電もなか」が有名らしく、近所の中学生たちが、馴れた様子でおやつを買うために入っていく。
お店の人も、「Aくん、こんにちは」と挨拶している。
東京の小さな商店街は、それ自体が自己完結した小宇宙であり、お馴染みさんたちが、親しげに挨拶する独立した空間である。
私は、通りすがりの旅人だった。
旅の記念として、どら焼きを2つ買った。
袋には
「想い出ばなしにつつまれて都電もなかは下町の人情のせて夢はしる」
という詩?短歌?が書いてあった。
友達と、都電の想い出について語りたいものだ。
和菓子店の前には、王子の狐の石像があり、可愛かった。
魚屋、八百屋、蕎麦屋などがある小さな商店街には、地元の人が大事にしているお地蔵さんの祠があった。
火災予防、眼病に効くというお地蔵さんを拝んで、お賽銭を入れた。
オモチャ屋さんの入口には、お子さんが乗れるような、都バスの形の乗り物が売られていた。
私は、マニアではないが、子供の頃からバスが好きだった。
だいたい、バスというものは、近郊の町まで連れていってくれますが、
数キロ先の見知らぬ街や、ちょっとした都会(本屋とレコード店、レストランと喫茶店さえあれば、一応、都会だった)に連れていってくれるバスに、私は、ロマンを感じていた。
きっと、そんなお子さんが、このバスの乗り物に乗って遊ぶかも、知れない。
「山の音」というしゃれた喫茶店もあった。
マスターは、山男なのだろうか。
それとも、川端康成が好きなのか。あるいは、思索型の登山家なのか。
立ち止まっていろいろ想像してみた。
しかし、すでに営業停止の店も、見受けられた。
株価は上昇しています、失業率は下がってます、マンションの売れ行きは好調です、海外渡航者も増えてます、とは、世間で言われていますが、
そういう華やかな世界が存在するとして、一方では、不景気な世界もあった。
そして、今や、自己責任の時代だ。
「よういドンで鳴る銃の音をいつの間にか聴き逃していた」
と人は言いますが、そもそも、銃の音さえなく、始まりも終わりもさだかではない競争をやっている社会にしか、私には見えなかった。
とはいえ、人はたくましいもので、
梶原駅近くに、古本屋があり、入ると本がたくさん積まれたなかに、脇の土間では、洗濯機が回っている。
シド・ビシャスの伝記や、未成年の殺人者に対する考察の本やら、エロ本やらが並んでいた。
面白そうだが、今の私には、刺激が強すぎた。
薬物中毒のベーシストや、未成年殺人者などは、関わりになりたくは、なかった。
「私にふさわしい本を与えたまえ」と
神さまに念じると
「自分にふさわしい場所」というタイトルの本を見つけて、それを買った。
谷郁雄という詩人が書いた本だった。
200円だった。
自分にふさわしい場所、まあ、板橋区とか北区、豊島区とかそんなあたりかな。